「お弁当が手配できませんでした」で終わる新人。指示待ちから抜け出す目的思考 「仕事」という字の意味を知っていますか?

「言われたことは、ちゃんとやったのに……」
そう思ったことはありませんか。指示通りに動いたのに評価されない。「もっと考えて」と言われても、何をどう考えればいいのか分からない。そんなモヤモヤを抱えている若手の方は多いはずです。
テレビ制作の現場で長くプロデューサーをしてきた中で、私自身が「仕事とは何か」を最もリアルに考えさせられた瞬間があります。
山奥のロケ現場で、新人AD(アシスタント・ディレクターの略)が「お弁当が手配できませんでした」と報告してきた日のことです。
この記事では、そのエピソードを起点に、指示待ちから抜け出すための「目的思考」という考え方をお伝えします。
ナオさん、私も新人の頃に似たことやらかしました……。「資料コピーしておいて」って言われて、コピーして渡したら「で、ホチキスは?」って。「言われてないし!」って思ったんですけど、怒られて。
あー、それ典型例。ハナの気持ちもわかるよ。でも、それが今日の話のテーマそのものなんだ。
えっ、私が間違ってたんですか? コピーは指示通りやったのに。
間違ってはない。ただ、これから話すADさんと同じ落とし穴にハマってるから、順番に話すよ。
山奥のロケ現場で起きた「お弁当事件」
都市から離れた山の中でのロケでした。スタッフと出演者、合わせて20名ほど。お昼時にお弁当の手配を、新人ADさんに任せていました。
しばらくして、そのADさんが戻ってきました。少し青ざめた顔をしていたのを今でも覚えています。
近くのお弁当屋さんに片っ端から電話したんですが、山の中まで届けてくれるところが見つからなくて。食事を用意できそうにありません……
確かに行動はしている。電話もかけた。汗もかいた。でも結論は「できませんでした」。
私はすぐには返事をしませんでした。この新人さんに、何を気づかせるべきか。それを考えていたからです。
叱るのは簡単。「もっとちゃんとやれ」と言うのも簡単。
でもそれでは、この人は次も同じことをやる。
問題は「努力不足」ではなく、「仕事の捉え方」のほうにある。そう感じていました。
あの時の新人ADさんに伝えたこと
私はADさんに、こう聞きました。
「あなたに与えられた仕事の目的は、何だと思う?」
ADさんは少し考えてから、「お弁当を手配することです」と答えました。
違うんです。「お弁当を手配すること」は手段。
本当の目的は、スタッフと出演者20人が昼食を食べられること。
これに気づけるかどうかで、打てる手の数が変わってきます。
目的がはっきりすれば、手段はいくらでもある。
- 近くのスーパーでおにぎりや弁当をまとめ買いする
- 近隣の食堂に20人で入れないか交渉する
- 地域の人に「どこか食事を出せる場所はないか」と聞いてみる
- 少し遠くてもスタッフの車でレストランに行く
「できません」は、すべての手段を試し尽くしてから言う言葉です。最初に言う言葉ではない。
あー……。私のコピーのときも、「参加者が読む会議資料を準備すること」が目的だったってことですよね。コピーは手段。
そう。だからホチキス止めも、人数分用意することも、自然と「やるべきこと」になる。
ADさんはしばらく黙って、それから「わかりました」と言って走っていきました。
その日の昼食は、近くのスーパーで調達したお弁当と惣菜でした。全員、ちゃんと食べられました。
「仕事」という字の、本当の意味
就職活動をしていた頃、ある採用担当者にこんなことを教えてもらいました。
「仕事という字は、事(こと)を仕向ける、という意味ですよ」
「仕」は仕える、「事」はこと=出来事・事象。
つまり仕事とは、人や状況を動かして、結果を生み出すこと。
「指示を待って、言われたことをやる」のとは、根本的に違うんです。
当時の私は「なるほど」と思いながら、正直よく理解できていませんでした。
本当の意味がわかってきたのは、自分が誰かに指示を出す立場になってからです。
「言われたことだけをやる人」と「目的を理解して動く人」の違いは、現場に立ってみると驚くほどはっきりします。能力の差ではなく、意識の差。これがじわじわと、長期的なキャリアの差につながっていきます。
指示待ちと仕事の、決定的な違い
整理すると、指示待ちと仕事には、こんな違いがあります。
- 指示待ちの人:相手の「言葉」に答える。1つ手段が使えないと全体止まる。
- 仕事をする人:相手の「目的」に答える。1つの手段が使えなくても別の手段を探し続ける。
「お弁当を手配して」と言われて、お弁当屋に断られた瞬間に止まるのが指示待ち。お弁当がだめならスーパー、スーパーがなければ食堂、食堂がなければ地元の人に聞く、と動き続けるのが仕事です。
繰り返しますが、これは能力の差ではなく、目的を意識しているかどうかの差。だから、誰でも今日から変えられます。
若手のうちは「言われたことをやる」が出発点になりがちです。それ自体は悪いことじゃありません。でもそれは、あくまで出発点。ゴールではない。
「ことを仕向ける」とは、目的から逆算して、自分で手段を考えて動くこと。これが、御用聞きと仕事の境界線だと思っています。
関連記事:ちゃんと考えていますか?考えることと調べることの違い
指示待ちから抜け出す、3つの習慣
「目的思考って、頭ではわかったんですけど、どうやって身につけたらいいですか?」と聞かれることがあります。私が現場で意識してきた3つの習慣を紹介します。
習慣1:指示を受けたら「なぜ?」を確認する
仕事を頼まれたら、すぐに作業に入らず、ひと呼吸置く。そして「これは、何のためにやるんですか?」と一度確認してみる。
失礼な質問じゃありません。むしろ、目的を理解しようとする姿勢は信頼されます。
「会議で使う資料です」と聞ければ、会議の参加者が読みやすい形にする必要がある。「お客様に提案する材料です」と聞ければ、見やすさやデザインまで気を配れる。「なぜ」がわかると、勝手に「どう」が見えてくるんです。
習慣2:「できません」を言う前に、3つの代替案を考える
手段Aが塞がれた瞬間に「できません」と言わない。「Aがだめなら、BかCかDはどうか」と、最低3つの代替案を考えてから報告する癖をつけます。
このとき、報告の仕方も変わります。「できませんでした」ではなく、「Aは難しかったので、Bを試してみます。よければCも検討します」と言える。同じ状況でも、評価はまったく違うものになります。
習慣3:「本来の目的に近づけたか」を振り返る
夜、寝る前でも、帰り道でもいい。今日やった作業を「本来の目的達成に近づけたか」という視点で1分だけ振り返ります。
「資料を10部コピーした」ではなく、「会議参加者全員が議論に集中できる資料を準備をした」。同じ行動でも、捉え方を変える練習です。
これを続けていると、翌日の行動が自然と「目的志向」に変わっていきます。
私もこのクセをつけてから、仕事の見え方がだいぶ変わりました。

習慣1の「なぜ?」って聞くの、ちょっと勇気いりますね。生意気と思われないかな……
聞き方次第だね。「目的を理解したいんですが」「こういう目的で合っていますか」って前置きすれば、嫌な顔する人は少ないよ。むしろ「ちゃんと考えてる人」って思われる。
私自身、今でも指示待ちになる瞬間がある
念のため書いておくと、私自身が常にできているわけではありません。
今でも「あ、これは指示待ちになっていたな」と気づく瞬間があります。依頼された内容をそのまま処理して、目的を確認していなかった。
後から「もっとこうすればよかった」と思う。そういうことは、56歳になった今も普通にあります。
大事なのは、完璧にやることよりも、目的を常に頭に置いて動くクセをつけること。
失敗しても、振り返って次に活かせばいい。この意識は、職種や業種を問わず使えます。営業でも、事務でも、クリエイターでも、フリーランスでも、副業でも。
「ことを仕向ける」という視点は、思考の習慣です。一度身につくと、仕事の見え方がだいぶ変わります。
あなたは今日、何を仕向けましたか?
「仕事」という字の意味を、たまに思い出してみてください。
指示待ちで終わるか、ことを仕向けるかは、目的意識の差だけ。大きな能力の差ではありません。今日、あなたは「指示された手段」ではなく「達成すべき目的」を意識して動けましたか?
その問いを持ち続けるだけで、仕事の質は少しずつ変わっていきます。
私、明日からまず「なぜ?」を聞くようにします。怒られたコピーの一件、ずっとモヤモヤしてたんですけど、ちょっとスッキリしました。
いいね。失敗を「なんで怒られたんだろう」で終わらせずに、次の行動につなげるのが一番大事。それ自体がもう、ことを仕向けてる証拠だよ。
えへへ、ちょっと褒められた。明日からまた頑張ります!







